年間ベスト 2016 |
1、山田尚子『聲の形』
告知も忘れたのですが、ここで書いております。(http://shop.comiczin.jp/products/detail.php?product_id=31038)←冒頭部分読めるよ!
そこでテーマ的に必要だから山本沙代『ユーリ!! on ICE』について触れているのですが、自分は勇利と誕生日が同じで、だからか、ずっと勇利が抱いていた「これで最後かもしれない」という感覚で文章を書いてました。
実際、来年度から本格的に教育業界で働く予定で、そうなると多分今までのように映画を観て、批評を読んで、何かを書く、という行為が出来ないかもしれない。だからまぁ、もし良かったら読んでやってください。
2、中村義洋『残穢 住んではいけない部屋』
ユーリ・ノルシュテイン『話の話』を観て、再見して評価が上がった。Jホラーの集大成にしてもっとも恐ろしい。1~3月、最後に何か書くつもりなのがこれ。
3、新海誠『君の名は。』
再見すると欠点が見えやすい映画ではあるし、後個人的に苦い思い出が色々思い浮かぶ映画でもあるのですが、しかし、減点法で引き算をしたくない映画なのです。
一言言うなら、売れ線どうこうって絶対後付けだから。
4、フェデ・アルバレス『ドント・ブリーズ』
『ヒッチコック&トリフォー』(ジャンル映画を無視した人選が題材を殺した映画かと。)を観た後色々考えていて、今、ヒッチコックに一番スタンスや精神が近い映画作家は誰だろう、と思った時浮かんだのはサム・ライミだったのですよ。んで、そのサム・ライミの直弟子が放った超ド級サスペンスがこれです。冒頭のロングからズームではじまる下りとか21世紀の『サイコ』といってもいい気がする。おぞましい円が出てくるとこも共通しているし。
21世紀の『裏窓』がジャウマ・コレット・セラ『ロスト・バケーション』だと考えると、映画史は見えないとこで更新され続けているんだなぁ、って。後内田英治『グレイトフルデッド』は絶対参照していると思う。
5、デヴィッド・ロバート・ミッチェル『イット・フォローズ』
誰もジョン・カーペンターという神を殺せなかった中、神殺しを敢行したフォロアー作品。爆弾見せてサスペンスを引き延ばすヒッチコックの手法が割と流行っていたと思うのですが、『イット・フォローズ』、『ボーダーライン』、『ドント・ブリーズ』でその使い方が三者三様だったのは面白かった。
6、横浜聡子『俳優 亀岡拓次』
私たちは光(環境)に当てられるから存在しているだけで、あっという間に消えてしまう存在なのかもしれない。そういう儚さをデジタルメディアに絡めて描いた作品が琴線に触れるのですが、その中でもそういった個々人の生を肯定しようという意志を一番感じたのは今作でした。松岡錠司『深夜食堂』の兄弟で、白石晃士『オカルト』への回答としては中村義洋『予告犯』より優れていると思う。
7、ジェイ・ローチ『トランボ、ハリウッドから最も嫌われた男』
ゲーマーの友人が名画座に言ったことがない、というので、早稲田松竹に行ったときに観た作品。
技巧的に目立ったことは何もしていないのですが、オールドスクールの演出で物語を語りきる様が題材にマッチしている。かつ、トランボという人物に憧れてしまった。あんな風に生き延びたいな、と今は思う。
8、山戸結希『溺れるナイフ』
欧米の娯楽に近い映画作家のシンボリズムとカットのリズムを、日本の女性監督がより洗練された形で踏襲しているのが、近年の日本映画の中での最大の収穫だと思うのですが、(ホドロスキー→山田尚子、アルジェント→安里麻里)日本の自主映画の流れをすべて受けきって、自己の血肉としているのが、山戸結希という作家ではないか、と。
しかもデビュー作で、その洗練を中盤物語のために捨ててしまう。なんという奔放さ。
9、黒沢清『ダゲレオタイプの女』
夢を見る男たち、男性の夢に絡み取られる女たち、それを追いかける過程でシステム化され喪われていくもの。黒沢清の作品だと近年で一番大人びた作品になっているのは、環境もそうだろうけど、物語が現代的な問題を貫いているからだと思う。
一言いうならば、女が幽霊になる場所は、開発の象徴であるある物が通る場所であり、決してカメラマンと助手の話は無関係ではないのだ、ということは強調しておきたい。
10、ギレルモ・デル・トロ『クリムゾン・ピーク』
マリオ・バーヴァの館ものを、得意のファンタジーやアニメ的要素を散りばめて、愚直に語り直したメロドラマ。『パシフィック・リム』で大絶賛している人たちの気持ちが分かりました。後この映画の想像力の一端に、熊倉雄一『王ドロボウJING』の「色彩都市ポンピエ」が絶対にあったはずで、ティム・バートンやジュネのイマジネーションで日本で受け継がれ、それがまたハリウッドで帰っていったという高揚感がある。今挙げたものの好きなもの一杯感。
皆様、一年間ありがとうございました。今年は色々心動かされる作品に触れることができました。同時に色々な人に会いました。今年出会ったこと、できたこと、できなかったこと、諸々を来年につなげていきたいと思います。サイトの更新は細々と続けていくつもりですので、来年も宜しくお願いします。それでは、よいお年を。