愛しのジェニファー |
今まで女性の犠牲者ばかりを撮ってきた監督がその女性を怪物に据えた映像作品を撮る、という興味深い作品。その怪物の設定は「顔は完全に化け物だが完璧なプロポーションの身体を持つ女性」といったもので、彼女が男性を誘惑し破滅する、という物語の筋書きにアルジェント流の男女観が伺える。その考えは、ジェニファーが獣のような声をあげながら主人公に馬乗りになるシーンでエログロの極地として結実する。この企画の中でアルジェントはアイデアマン、ラリー・コーエンの上をいく設定を持ってきたのは嬉しい誤算だった。
極彩色の色使いも舐めるような主観視点もこの映画には存在しないが、それ故にアルジェンドの映画監督としての地力をこの作品の中で感じることができたように思える。特に不穏な空気を醸し出しているファーストショットの俯瞰ショットと、ラストシーンは素晴らしかった。アルジェント、パトレイバー2なんか観ているのかなぁ、それとも昔の映画にあの男女の姿を象徴するシーンがあるのかなぁ、などと考えながら唸らされました。