自分がgrapevineというバンドだけは未だに聴き続けている理由 |
無責任に夢を歌うことも、シニシズムに染まった絶望を歌うことも拒絶してくれたこと
どうしようもない現実とちっぽけな自分、その間で生じる絶え間ない痛みを見据えながらも、それでも進んでいかなきゃならないんだということを歌ってくれたこと。
多分この辺が、最近このバンドにたいして絶対的な信頼、ある種の信仰に近いものを持つ理由になったのかもしれない。だからこそ、ほとんど音楽というものに関心がなくなっていまった今でも「grapevine」というバンドの曲には、耳を傾けているのだと思う。
そういった意識を感じたのは『その未来』というは曲を聞いた時だった。
その時書いた文章は、自分でも苦笑してしまう位興奮していて引用するのは恥ずかしいのだが、「モヤモヤとか葛藤とか迷いとかが頭の中で渦巻いているのにそれらすら全部引き連れて走りだしたことを伝える曲」や「歪んている(『discord』)ストレート」といった印象は今でも変わってないし、間違ってもいないと思う。
この曲はgrapevineというバンドの今までの曲の中では(この曲の前段階に『discord』『breakthrough』といった曲群があることを除けば)明らかに異色で、気持ちを奮い立たせるような何かを表現しようとしている。でもサビよりも間奏に力を入れた構成や歌詞のところどころにgrapevineらしさ、田中という作詞家らしさも見られる。だからこの曲の歌詞はいびつで矛盾している部分がある。ラスト、傷が消えないことを歌いながらも唐突に「はじまりさ」と切り出すところなんか支離滅裂もいいとこで、作詞の水準自体は他の曲よりも低いのかもしれない。でも、そういった歌詞の完成度を犠牲にして矛盾を抱きながらも、田中が今までの曲を嘘にしてしまうような歌詞はこの曲に乗せなかったこと、その事実に僕はあれだけの興奮と感動を覚えたんじゃないかなと思う。
そして『その未来』で感じた何かは、『FLY』という曲で確信に変わった。
「可能性など別に、あろうがなかろうがかまわない」という進んでいくことへの最低限の肯定と揺るぎない決意を示すこの曲は、サポートメンバーを含めた5人でのgrapevineというバンドのスタートに相応しいものだった。そしてそこから田中は『ジュブナイル』の歌詞にあるように「哀しいことを言うある意味の誠実さ」を捨てたように思える。例えば『作家と顛末』と『冥王星』の違いなんかにそれは表れているような気がする。
同じく作家の表現することの痛みや空しさ、苦しさを描いた二つの作品だが、痛みや空しさの中へただただ沈みこんでいく作家を描いた『作家の顛末』に対して、痛みや空しさを「冥王星」という太陽系から消された星とSFというジャンルに託し、その中で足掻いていく作家を描きだす『冥王星』には、やはり上記の空虚な夢でもなくシニシズムでもない、現実にしがみつこうとする意思が見えているような、そんな気がする。
多分、メジャーとマイナーという枠組みの破壊の一翼を担っていたはずが、その破壊したはずの枠組みの狭間を、幽霊のように彷徨い続けることになってしまったgrapevineというバンドだったからこそ、自らのシニシズムやニヒリズムと、青春や夢を謳歌するような非現実的な歌とを相対化し超える曲が作れたのではないか。そしてそれはローマ字とかなに自らの文学が分裂してしまい、そしてそれを統合したことによって新境地に達することができた石川啄木と重なる、といったら、言いすぎだよねwそれ位は分ってるw
でも、今のこのバンドが凄くいい状態にあることは確かだと思うし、6月に発売されるアルバム『sing』には本当に期待している。ロキノン系の月見草がバンドという体制を固持してきたことによって、ついにその中心に成ることができるんじゃないかと。
ブログ内で「grapevine」で検索してこの記事に巡りあいました(笑)
相変わらず丁寧な言葉で語られてるので、とても信頼しています。
そしてgrapevineに体する批評が絶妙だと思います。
「歪んでいるストレート」まさにそう感じました。
grapevineの歌詞世界には、
汚れを隠さない美しさがあると思うんです。
無責任に前向きな言葉を歌うバンドより、よほど信頼できるというか、
「ああ、でもやっていくしかない。」という弱く強い気持ちがもてます。
23日の新木場のライブに参戦してきます。楽しみです。
4月に入ってから割と生活が変貌し忙しく、ブログも放置していたので返信遅れてしまい申し訳ない。
>>「ああ、でもやっていくしかない。」という弱く強い気持ちがもてます。
そう、そういう気になるんですよね。落ち込んだとき何でこのバンド聞いていたのだろうと自分でも不思議に思っていたのですが、それを受け入れるためだったのかなぁ、とコメントを見て思いました。
ここ数か月はホント、自分の至らなさとか無力さとかを自覚してしまうことが多いのですけど、音楽を聴きながら頑張っていけるといいかな、と思います。
そういえば、野球の比喩でふと「ミスフライハイ」の歌詞を思い出して調べたのですが
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1117298991
こんな意味があったのか、と。野球はそれなりに観戦しているはずなのに気付かなかった。(ー_ー)
ライブ楽しんできてください。…ってお前もちゃんと足運べよっていうね。
体調も優れないようで、あまり無理しすぎないでくださいね>_<
逃れられない現実の歪みを正しく歌う、
ある意味とても素直なバンドなのかもしれないですね。
ひねくれてるとは思いますが・・・
最初はメロディと田中さんの声に惹かれて聴いていましたが、
いまはやわらかな印象の中に隠された歌詞の毒に夢中になっています。
就活から逃げるように23日の新木場に参戦してきます、楽しみです。
同世代の子でバインを知ってる方が少ないので毎回一人ですが(笑)