映画の公開延期・中止の問題点 |
http://www.news-gate.jp/2011/0319/7/
■公開延期か上映中止が発表された作品
2月19日より公開中→上映中止 『ヒア アフター』(ワーナー)
3月12日公開→3月19日(土)から25日(金)まで公開 『ナナとカオル』(バップ)
3月19日(土)公開→公開延期 『ザ・ライト エクソシストの真実』(ワーナー)
3月26日(土)公開→公開延期 『唐山大地震 想い続けた32年』(松竹)
3月26日(土)公開→公開延期 『ジャッカス3D』(パラマウント) ←NEW
4月1日(金)公開→公開延期 『世界侵略 ロサンゼルス決戦』(ソニー・ピクチャーズ)
4月9日(土)公開→公開延期 『4デイズ』(ショウゲート) ←NEW
4月16日(土)公開→公開延期 『カウントダウンZERO』(パラマウント)
4月22日(金)公開→公開延期『サンクタム』(東宝東和)
5月21日(土)公開→公開延期『ゴーカイジャー ゴセイジャー スーパー戦隊199ヒーロー大決戦』(東映)←NEW
6月4日(土)公開→公開延期 『父の初七日』(太秦)
燃料不足に伴うフィルム移送などの物理的事情、また地震の影響で製作スケジュールが大幅に遅れたこと(これは『ゴーカイジャー ゴセイジャー スーパー戦隊199ヒーロー大決戦』のことかと思います。東映頑張ってくれ)など、諸々の理由から公開延期になっているようなので一概に言えませんが「空気を読む」という名目のもと、6月公開の映画まで公開が延期になってしまっている。これは、将来的にみて多くの問題点があるように思えます。
1・「内容による自粛」は、事実上強力な内容に対する規制として働いてしまう可能性がある。
今回公開が延期された映画の中で特に問題だと思われるのが、環境問題を取り扱った『不都合な真実』を撮ったスタッフが核兵器を題材に撮ったドキュメンタリー『カウントダウンZERO』だと思います。
http://blog.to-zero.jp/news/
残念ながら『不都合な真実』は未見ですが、(内容にも偏りがあるという話も聞きますが)一連の原発事故によって核の脅威に晒された我々にとって、ショッキングな内容が含まれているにしても議論のきっかけになる映画であることは確かなはずです。このような映画の上映の機会が奪われることは、今回の地震で表出した問題を題材にした映画を撮ることが将来的に萎縮される可能性を孕んでいます。
電力供給と原発、その安全性と管理体制についての問題は、これからの日本が必ず考えなければならない問題です。特に、ウィキリークスや共産党など多くの団体から原発の安全性の脆弱さについて指摘がなされていながらも、それらが日本政府ー東京電力ー原子力保安院という横の繋がりと癒着によって軽視され続けた結果今回の事故の被害が拡大したことと、その癒着を許した日本の社会構造については、絶対に変えていかなければならないことです。「内容による自粛」はこういったものを題材にした映画が上映されないことになりうる可能性を秘めているように自分には見えます。それが直接の禁止でなくとも、多くの資金をかけても上映されないかもしれない映画を、今の疲弊している邦画の製作者たちはリスクを背負ってまで作るでしょうか?
大げさなことを言っているように見えるかもしれませんが、事実そういった「検閲」に等しい自主規制はもうはじまってしまっています。
【原発問題】『週間漫画ゴラク』の「白竜」 原子力マフィア編がお蔵入りに 消されたか・・・ (画像あり)
http://news020.blog13.fc2.com/blog-entry-1363.html
2・将来の日本のことを考えた時に、経済活動を抑えることよりもしていくべきである。
NZ地震、経済損失9千億円 失業・賃金未払いが深刻
http://www.asahi.com/international/update/0228/TKY201102280518.html
未曾有の大地震、放射能の恐怖による外資の撤退など、今後日本の経済は大幅な打撃が明らかになっていくかと思います。その中で、少しでも経済を回せる部分を回して日本の経済を維持していくことは大切なことであると思います。
勿論、セリーグが強行でナイターをやろうとしたような、被災者や現状に何の配慮もない経済行為には僕は反対です。ですから、電力の維持のために映画館の営業時間が短縮されるなどのことは行われて当然だと考えます。しかしながら、「何が何でも自粛」となってしまっては、日本の経済は停滞するばかりですし、被災地にも一文の得になりません。被災地に資金を集めることが出来るのも又、経済活動なのではないでしょうか。
C・イーストウッド監督作「ヒア アフター」DVD収益の一部、日本に寄付
http://eiga.com/news/20110317/5/
全国のシネマサンシャインにおける「東北地方太平洋沖地震」の義援金に関して
http://www.cinemasunshine.co.jp/info/
また、映画とは直接関係はありませんが、以下の「やらない善より、やる偽善」という言葉に僕は物凄く賛同します。
VM軍が義援金を募集「やらぬ善より、やる偽善」=全日本プロレス
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110318-00000019-spnavi-fight
最後に、僕個人のお勧めの映画としてジョー・ダンテ『マチネー 土曜の午後はキッスで始まる』と紹介して終わりたいと思います。僕は放射能の恐怖や現在の日本の非日常、焦燥にかられる社会の情勢を観ていたとき、この映画のことがずっと頭から離れなかった。キューバ危機の時代の中で、放射能の怪物を題材にした映画が、どれだけ人を現実の恐怖から忘れさせ、楽しませることが出来るのか?
ジョー・ダンテの最高傑作の一つであり、僕がもっとも愛する映画の一つである『マチネー』では、恐怖や不安に駆られる世界の中で、映画に何が出来るか?が示唆されているような気がします。
マンガ大賞が最近発表されました。その選考員の一人が、「娯楽でしか、誰かの心に届かない癒しや感銘、教えが確かにあると思うのです」と言ったそうです。僕も、娯楽の可能性を信じたい。
その可能性が「自粛」によって消えてしまうかもしれないことは、もっと議論されてしかるべきです。これが長期的なものにならないことを祈っています。