なんつーか、もっとやれんだろ - 『レッド・ティアーズ』 |
・最近の漫画で石田スイ『東京喰種』もお薦めだけど真に薦めたいのはわらいなく『KEYMAN』。マッドハウスでアニメ化してほしい。
・多分旧作含めた年間トップは『アギーレ・神の怒り』で確定。ヘルツォークみたいな作品なんだよ、俺が求めてやまないのは!っていう感じでござる。
・後、grapevineの「rakuen」みたいな曲、あれは至高。
・野球が開幕したものの、藤井が長期離脱しそうでテンションだだ下がり待ったなし。
・後一週間位から憂鬱が基本の一喜一憂の日々が始まるのですが、準備終わらない・・・。
『レッド・ティアーズ』
人を食料にすることでしか生きていけない人外の存在とそれを無慈悲に狩り治安を守ろうとする人間の二つの立場があり、その間で主人公が揺れ動き、どちらの立場に立つか大きな決断を下す。そんな、ヤングジャンプの新星『東京喰種』を髣髴とさせる設定の中、スプラッタ描写を交えた高速のワイヤーアクションが展開されるのがこの映画です。
こう字面だけ書くとかなり面白そうだし、動ける役者を使った後半のアクションシーンなんかは頑張っているのですが、この設定を使うならもっと面白く出来ただろ、と思ってしまう自分がいます。
特に、前半部分の脚本はもうちょっとなんとかならなかったという位酷い。連続猟奇事件という軸がありながら全くその話に展開や進展が起こる様子がなく、キャラクターを説明するためだけの三文芝居を延々と見せ続けられていく前半は、パズルのピースをバラバラのまま投げつけられた気分にさせられます。特に、主人公の刑事の行動はネタでやっているとしても常軌を逸していて、「優秀で真面目すぎる刑事」というキャラクターにはどう足掻いても見えない。そのことが、後半の展開に大きく水を差してしまっていることは否めません。
常に焦点が定まっていない脚本という印象は後半も拭えず、特に主人公とヒロインの視点はどっちかに寄せるべきだったのではないか。ナッキーのアクションを見せたい、という製作者の欲求が先走りすぎて、色々エピソードが駆け足になってしまっていたのが残念だった。予告編観る限りまともにミステリーやる気はなかったんだから、人外の世界とそこにまつわる人の悲哀を最初から事細かに描写すべきだったのではないかなぁ。勿論常に時間の都合があるのが映画とはいえ、脚本のブラッシュアップはもっとちゃんとすべきです。それがアクション映画でも。というかアクション映画で一番大事なのはそのアクションに登場人物の心情を乗せることが出来る脚本だ、って現在日本最高のアクション映画監督の川尻善昭が言っていたよ確か。(ちなみにこの映画の話、要は『東京喰種』の第1話と2巻の親子と喰種捜査官のエピソードを足して2で割ったような話なんだけど、この2つ混ぜたらそりゃ視点が定まらないわな)
また肝心のアクションシーンの撮り方についても、安易な手ぶれの多用や構図の見せ方の甘さなど、速さの演出に注視するばかり見せ方が雑になっていた印象。特にこの監督、アクションを起こそうとする人のアップショットを1カット短く挿入することで「これから起こること」を予告してしまい、その後のアクションの驚きを削いでしまうという悪い癖があるので、次回作では絶対やめて欲しい。画面外からワイヤーで高速に移動して加藤夏希が襲いかかってくるなんて面白いショットの威力が、それで半減してしまっている。
(後、これは別にこの映画に限った話ではないのですが、アクションのカットの流れを断ち切ってまで、西村喜廣の特殊造形を駆使したスプラッターをこれみよがしに見せるの、もうやめにしませんか。)
絶対面白い題材だし、後一歩で本当にエンターテイメントとして万人に通用するものが出来そうなだけに、この出来で「アクション頑張った―」「スプラッターたのしー」なんて製作者たちに満足はしてほしくない。
最近でいえば『彼岸島』じゃなくて『デイブレイカ―』クラスの作品を日本で産んで欲しいんですよマジで!あの映画ディティールでは凄く馬鹿馬鹿しい描写あるけど、話の軸は大まじめな社会風刺じゃないですか。低予算で大変なんだろうけど、そういった根の真面目さを日本のB級映画も見せて欲しい。