遅くなりましたが |
プレスリーvsミイラ男
正直な話、硫黄島の手紙より心に響いた。
主人公である、エルヴィス・プレスリーが本物である、という確証は映画中どこにも提示されないし、それを信じているのは友人である自分をJFKだと思い込んでいる黒人ただ一人。時代のヒーローだった彼は落ちぶれていて、本物かどうかさえも分からない。対するミイラ男も盗まれても忘れ去られるようなたいして価値のないもので、どちらも胡散臭いことこの上ない。
戦いのスケールも小さく、話は老人ホームから出ることはない。二人とミイラ男の戦いは誰にも知られないだろうし、二人の死体は劇中何度も出てくる二人の死体業者達によって何の価値もないものとして処理されてしまうに違いない。
そんな中で「馬鹿馬鹿しい」と頭で分かっていながらも、それでも自分の魂を守るために自分の姿を突き通して戦うプレスリーと偽JFKはとても間抜けで笑えるが、それ以上にとてつもなくかっこよくて素敵だ。馬鹿カッコいい、とでも形容すべきなほど。
日本のこういったコメディ映画だと、どうも馬鹿をやろう馬鹿をやろうとして表層だけ楽しそうで中身は何にもない映画になってしまうことが多い気がするのだけど(自分は『恋の門』とかが全然駄目だったりする)この映画位重いテーマと本気があったほうが笑えるし面白いと思うんだよなぁ。(そういう映画なんかあったっけなぁ、と考えていたら『下妻物語』を思い出した。そういえばこの映画と下妻は似ている気がする。閉鎖的な空間が舞台であることや、プレスリーは偽JFKがいるからこそ煌びやかな衣装を着ることができる、というあたりが)
老人に限らず、現代人が個人足りえるには、こんな風に生きるしかねぇんだ!とブルース・キャンベルが言っているような気がしてならなかった。これを今年の指針にしようと思う。新年そうそういい映画を観た。